リキテックス

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リキテックスとは

liquitex  1950年代以降、世界のアートシーンの中心は、ヨーロッパから、アメリカ大陸へと移って行きました。当時のアートシーンは新しい表現、技法、そして材料とニュースタイルの追求に拍車がかかっていました。多くのアーティストが新しい表現を可能にする素材の登場を待ち望んでいたのです。1955年、アメリカで理想的な絵具の研究を重ねていたDr.ヘンリー・レビソンは、その絵具のバインダーとしてアクリリック・エマルジョンに着目し、成功を収めました。比類のない安定性を持つ、世界で最初の水性アクリル絵具「リキテックス」の誕生です。リキテックスカラーは、当時第一線で活躍していた若いアーティスト達に積極的に支持され、60年代以降のアメリカンアートの隆盛を迎えました。そして新たなアートの潮流とともに、リキテックスもまた世界中であらゆるアーティストに愛用されるようになったのです。

米国サイトhttp://www.liquitex.com

アクリル絵具の歴史

メキシコの大壁画運動などをきっかけに、1940年代には屋外や大画面に使用できる安価で堅牢な絵具を求める声が大きくなりました。やがて第二次世界大戦が終了すると各種の合成樹脂を原料とした絵具の開発が本格化しました。初期の合成樹脂絵具は、専門家用の絵具としての開発ではコスト的に難しかったため家庭用の塗料として開発されて行きました。
 家庭用塗料を原料別に分けるとニトロセルロースを使用したもの、アルキド樹脂を使用したもの、PVA(ポリビニルアセテート)を使用したもの等が市販されました。ニトロセルロース系の塗料はジャクスン・ポロックが初期に使用しています。流動性が高く強い艶を持っており、有機溶剤で希釈します。アルキド樹脂を用いたものはパトリック・コールフィールド、ピーター・ブレイク、フランク・ステラ等によって使用され、筆跡が残りにくく強い艶を持っています。フランク・ステラは当時の専門家用絵具にはなかったメタリックカラーをこのアルキド樹脂塗料で使用しています。PVAはマットでフラットな画面が得られ筆跡を完全に消すことができる特長を持っており、ブリジット・ライリーやリチャード・ハミルトン等に好んで使われました。
 1940年代の後半になって米国のレナードブクー氏によって最初の合成絵具 「MAGNA」が開発されました。「MAGNA」は溶剤型のアクリル絵具で、溶剤の揮発によって乾燥するため乾燥が非常に早いのが特長です。希釈にはテレピン油を使用し、乾燥後もテレピン油によって溶解します。速乾性、塗面がフラット、薄めても色が弱まらないなどの特長を生かしてロイ・リキテンスタインやモリス・ルイス等によって使用されました。
 1955年に溶剤系アクリル絵具の欠点を克服すべく、水性エマルジョンタイプのアクリル絵具が開発され、「liquid」と「texture」という言葉を合わせて「liquitex・リキテックス」と名付けられました。この絵具は水分が蒸発して乾燥するため乾燥時間が適度であり、塗面は堅牢で何よりも水で希釈できる手軽さが非常に大きな特長となっています。また乾燥後は重ね塗りをしても下の色が溶け出さないので技法の可能性を飛躍的に広げました。デビット・ホックニーやアンディー・ウォーホル、ジョン・ホイランドなど多数のアーチストが使用しています。
 このように家庭用塗料から次第に専門家用の絵具としての地位を確立していった合成樹脂絵具は、1960年代には油絵具に代わる新しい絵具として画家達の間に浸透していきました。これらの合成樹脂絵具、とりわけ水性エマルジョン系アクリル絵具は作家の技法上の制約を取り除き、その可能性を飛躍的に広げました。第二次世界大戦後の現代絵画の歴史は、これらの合成樹脂絵具の歴史そのものと言っても過言ではないでしょう。
 
参考文献 The Impact of Modern Paints by Dr.Tom Learner

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